蕎麦の形態と生育


学名Fagopyrum esculentum タデ科ソバ属。

植物や種子としての蕎麦をまとめました。





@植物としてのそば


 茎の高さは夏そばで60センチ、

 秋そばで130センチまで成長するが、

 根の深さは浅く、100〜200mm程度。

 種を蒔いてから30日で花が咲き、60日で収穫期を迎える。

 花は直径3〜6ミリ、花弁のように見える5枚の蕚、

 8本の雄しべ、1本の雌しべからなる。

 花は各枝の先端にたくさんの集まり総状をなしており、

 多数の蕾からなり下部から少しずつ咲き、

 先端へと進む。(無限花序)

 そばは一つの花の中では受粉せず、

 別の株であっても、長柱花同士や短柱花同士では

 受粉ができない仕組み(他家受粉の他殖性)

 になっている。

 結実するためには、長柱花には短柱花、

 短柱花には長柱花の花粉が必要なのである。

   ← そばの花

  ← 花のイメージ


A子実


 子実は、「甘皮」「胚乳」「胚芽」の

 3つの部位からなる。

 「甘皮」は子実の表面部である。

 構造的にはソバ殻のすぐ内側に位置する。

 この甘皮には、蛋白質や、ルチン、クロロフィル等、

 そばが身体に良いと言われる由縁となる

 栄養素が豊富に含まれている。

 特にルチンには抗酸化作用があり、

 紫外線からソバの実を守る作用をしている。

 さらに甘皮は、そばの風味の最も強い部分である。

 甘皮のすぐ内側に位置するのが「胚乳」である。

 胚乳は子実の大部分を占めている。

 胚乳にはデンプン粒が高密度にかつ大量に

 含まれており、発芽のための養分貯蔵庫の

 役目を担っている。

 胚乳は製粉した場合、白っぽいサラサラとした

 粉になる。

 俗に言う「御膳そば」「更科そば」の様な

 白く上品なそばには、この胚乳を主とした

 そば粉が使用されている。

 また、そば麺の歯切れの良いシコシコとした

 食感はこの胚乳のデンプンによるものである。

 胚乳のさらに内側、ソバの実の中心部に

 「胚芽」が位置する。

 胚芽の形状は、ソバの実の横断図ではS字型に、

 縦断図では渦巻き型に観られる。

 胚芽の両端は胚乳を覆うように甘皮に内接している。

 ← 子実の断面


B夏そばと秋そば


 そばは年に2回収穫される。

 主に甲信越地域において七月上旬に収穫するもの夏そば

 十月下旬に収穫するもの秋そばをいう。


Cそばの種類


 そばは漢字で書くと蕎麦と書くが、

 麦の種類ではない。

 食用になる蕎麦はタデ科の一年草の草木植物である。

 分類学では「種子植物門、被子植物亜門、

 双子葉植物網、タデ目、タデ科、ソバ属の種」である。

 タデ科に属する植物は約800種あるが、

 栽培されているのは蕎麦、食用大黄ぐらいで、

 ほとんど雑草だという。

 植物学のそばの種類は「普通そば」、「韃靼そば」、

 「宿根そば」の3種類である。


 (1)普通蕎麦


  日本をはじめロシア、中国本土、アメリカ、カナダ、

  ヨーロッパ、オーストラリア諸国、アジア諸国など

  世界各地で広く栽培されている。

  日本人が一般に食用にしているそばは普通そばの事。

  子実は黒く、形はほぼ三角形。

  草丈は40〜70センチほど。

  淡緑色で根元にいくに従って赤みを帯びている。

  花は小さく白色。

  長柱花と短柱花が存在する異花和同性。

  虫媒や風媒による他家受粉を行う。

      ← 普通そば 


 (2)韃靼そば


  主にシベリア、中央アジア、中国西部、

  ヒマラヤなど海抜1000〜1500メートル以上の

  高地で栽培されている。

  韃靼人が好んで栽培したことから

  この名称がついたとされ、

  苦味が強いため別名「苦そば」とも呼ばれている。

  子実は普通そばより小さく丸みを帯びており、

  花は淡緑色。

  普通そばと異なり自家受粉を行う。

  ルチンが豊富に含まれているため、

  健康食材としての用途開発が進んでいる。

      ← 韃靼そば


 (3)宿根そば


  主に中国、タイ、ネパール、チベットなどに存在し、

  路傍、田畑、居住地周辺のやや水分の

  多い土地に群落をなしている。

  日本には江戸時代末期から明治時代にかけて

  中国から入ってきたとされている。

  地下に黄赤色の肥大した根茎があり、

  花は多く咲くが実はほとんどならない。

  葉や茎が枯れても地下の根はしっかりと生きていて、

  春になるとその根から新たに芽が出てくるため

  「宿根そば」の名が付いた。

  またその若葉は薬用や食用になるため、

  「野菜そば」とも呼ばれる。

     ← 宿根そば



D電子顕微鏡写真