天ぷら



海外においても日本料理のひとつとして確立した天ぷら。

カリッとした衣の奥にフワッとした種。

出汁の効いたツユにくぐらせて食べると、

素材の美味しさと出汁の相乗効果が得られます。




@歴史


 揚げ物の最初は奈良・平安の頃(8〜9世紀)で、

 中国の唐から伝えられ、宮中で広まった

 唐菓子が挙げられる。

 このときは,米の粉などを練って油で揚げたもの

 などであった。

 魚介類の衣揚げが「天麩羅」と呼ばれるのは、

 安永年間(1772〜1780年)で、

 屋台を中心に人気を博した。

 串に刺して揚げたものが皿に載せて売られており、

 お客は立ったまま、好みの串を選んで

 そのまま丼のつゆに付け、大根おろしで食べる。

 嘉永年間(1846〜1852年)に登場する「金ぷら」は、

 当時贅沢品の卵や油を使って黄金色に

 揚げたところから、その名が付いた。

 大正12年の関東大震災を契機に関西では

 色の付いたごま油を使う店が登場し、

 東京では関西の影響を受けてあっさりと揚げる

 天麩羅店や、魚介類だけでなく野菜を揚げる店が多くなった。

 またあっさり味の天麩羅に合わせ,

 塩で食べさせる店も増えてきた。


A調理効果


■油の香り


 油がたっぷり入った状態で加熱されると、

 鍋の表面以外の油は空気に触れることなく高温になり、

 特有の香りが出る。

 この香りをディープフライフレーバーとも呼ばれる。


■歯ごたえ


 一口食べたときの、サクッとした衣の歯への感触と、

 次に感じるソフトで風味の良い材料の味である。

 天麩羅は衣によって保護されているため、

 材料は外にある高温の油の温度の影響はあまり受けない。

 衣の水分が蒸発している間は、内側にある材料は

 100℃以上の温度に上がることはない。

 美味しい天麩羅は、材料が衣に包まれた状態で、

 穏やかな加熱によって蒸された状態になるので、

 柔らかく仕上がる。


B油の種類


■大豆油(油分:16〜22%)


 日本の食用油の中で大変ポピュラーな油で、

 油切れがよい、特有のうまみを持っている。

 家庭用サラダ油は、この大豆サラダ油と菜種サラダ油を

 調合したものが主流。

 マーガリンの原料としても使われる。



■菜種油(油分:38〜45%)


 風味は淡白で酸化しにくく、熱に強い油。

 キャノーラ油として広く利用されている。


■べに花油(油分:25〜40%)


 サフラワー油とも呼ばれる。

 リノール酸の含有量が73〜79%のハイリノール種と

 オレイン酸の含有量が75〜79%のハイオレイン種がある。

 油くささがないのでドレッシングやマリネなどの

 生食用としてよく使われている。


■コーン油(油分:40〜55%)


 酸化安定性が良く、加熱すると香ばしい独特の

 香りがたち、香味豊かな揚げ物に仕上がる。

 風味を生かしてドレッシングやマヨネーズにも使われる。


■綿油(油分:15〜25%)


 油の王様といわれ、風味とまろやかなうまみが特長。

 風味の安定性がよいのでサラダ油や

 マヨネーズの原料に使われる。


■ゴマ油(油分:45〜55%)


 リグナンと呼ばれる天然の酸化防止成分を

 含んでいるので、酸化しにくい油の一つ。

 ごまの種子を焙煎してから搾ったタイプのごま油は

 香ばしい風味が特長で中国料理や天ぷらなどの

 香りを楽しむ料理に欠かせない。

 また、焙煎しない透明タイプのごま油もある。


■オリーブオイル(油分:15〜35%)


 特有の香りとうまみがあり、

 ヨーロッパでは古来最高級の油として尊ばれている。

 地中海料理やシーフードサラダ、マリネなどの食用に

 使われるほか、化粧品、医療品などにも用いられる。


■やし油(油分:65〜75%)


 ココナッツオイルとも呼ばれている。

 常温で固体という性質を活かしてマーガリン、

 ショートニング、製菓用油脂として使われるほか、

 シャンプー原料にも用いる。



 天ぷらにはサラダ油にごま油を3割程混ぜる。

 ごま油を混合する理由は酸化を抑えるためである。

 一つは酸化しやすいリノール酸の比率を下げて、

 オレイン酸の比率を高く保つため、

 一つはごまのみに含有するセサモリンの

 加熱によって生成されるセサモール、

 更にセサモリンが変化して出来るセサミノールによって

 酸化防止性が高まる。


C天ぷらの基本


■衣


 油と衣・ネタの温度差を付けると美味しくあがるため、

 水は冷蔵庫、粉は冷凍庫に入れておく。

 小麦粉は掻き混ぜ過ぎると、小麦粉の蛋白質によって

 グルテンが形成される。

 グルテンが形成されると、揚げているとき衣の水分が

 油とうまく入れ替わらず、サックリと揚がらない。

 魚介類などの水分の多い天種は小麦粉を付ける。

 材料の表面の余分な水分を取り去り、

 揚げたときに材料と衣の間に水蒸気によって

 気泡が生成されるのを防ぎ、衣が剥がれるのも防止する。


■油


 鍋の深さの4分の3の量が適量。

 タップリの油を使い油温の低下を少なくする程、

 天麩羅は味良く揚げられる。

 油の温度は180℃前後で揚げるが、

 一般に温度の高い油で揚げる方が味良く仕上がる。

 しかし、油の温度が200℃以上になると酸化が進んでしまう。