蕎麦の生産


日本人のDNAに刻み込まれている蕎麦。

残念ながらほとんどは外国産です。

蕎麦の生産についてまとめました。




@生産


 一反歩当たりの収穫量を比較すると米600kg、

 麦350kgであるのに対し、ソバは90kg程度である。

 収穫高が悪い要因には、受粉の効率が悪い事と、

 株の下から段々に花を付けた順に結実するため、

 一株中での実の熟し度合いが異なり、

 収穫時にすでに熟しすぎた実が

 落ちてしまっている事にある。

 日本人一人当たりの消費量は

 明治時代と比べると1/3程度で、

 もりそばに換算すると10.6枚分となる。

 一人当たりの消費量は激減したが人口が

 増加した事と国内収穫量が減ったことから

 輸入量が増える結果となった。

 国内生産地は北海道がダントツで、

 北海道に続く県は年次によって変化している。

 ← 生産割合

 高度経済成長を期に日本のそば収穫量が減り、

 約7割を海外からの輸入に依存するようになった。
 ← そばの需給状況


A生育


 そばは播種後20日ぐらいで開花が始まり、

 60〜70日程度で成熟に達する短期作物である。

 5〜7日で発芽し、本葉5枚目あたりから

 着蕾が認められ、播種後20日くらいに

 開花期を迎える。

 開花始めから10日程度で最頂花房の花が

 開き開花盛期に達し、播種後60〜70日に

 子実の黒化率が70〜80%になると収穫する。


  ←15日   ←30日
  ←50日   ←60日


B生産条件


 (1)水分


   葉から水分を吸収する蕎麦は、

   霧や夜露が現れる寒暖差の大きい地域が適する。

   献上蕎麦として有名な霧下そばが良いと言われたのも、

   こうした水ストレスが少ないことが所以である。

 (2)日照時間


   日照時間が短い時期に栽培した蕎麦の方が、

   風味成分であるたんぱく質が多く含まれている。

 (3)実の成熟期間


   成熟期間が短い登熟不良の種子の方が抗菌力が強く、

   抗菌力の元になる香り物質の含有量が多い。

 (4)標高


   標高が高い方がたんぱく質が多いため風味が良く、

   蕎麦粉も緑色が濃い。

 (5)気候


   霧や露が発生するような寒暖差が大きく、

   冷涼なところで収穫された蕎麦の方が、

   揮発性のある香り成分の減少が少ない。


 以上の点から、山間部で育てられた蕎麦が風味が良い。


C収穫


 (1)手刈り

  刈取り時の脱粒を防ぐために、早朝の露のあるうち、

  または夕方か曇天の湿度の高い日に行う。

  利き手に鎌を持ち、反対の手で茎をつかんで刈取る。

  根張りが弱く抜けやすいので、

  土の付いた根が混入しないようにする。

  刈取ったそばは後熟をさせるために7〜10日程

  島立てを行い乾燥させる。

  島立ては10束をひとまとめにして、

  根元を下にして寄り添うように立てる。

  手刈りはそばの総時間のうち50%以上を占める。


 (2)機械による刈取り


  小型機械では大豆用の歩行型一条用

  ビーンハーベスタ、もしくは水稲用バインダを

  使用する。

  大型機械では刈幅2〜3メートルの大豆・

  そば専用コンバインである。


D乾燥


 自然乾燥は天気が良ければ10日程で乾燥するが、

 降雨にあうと場合によってはカビが発生し、

 甘皮のクロロフィルが破壊され色落ちする。

 平型静置式乾燥機は熱風を送風する送風機と

 乾燥箱から構成され、乾燥箱のスノコの上に

 玄そばを載せ乾燥させる。

 30〜35度の比較的低温で乾燥させ、

 風の当たる部分と当たらない部分とで

 ムラが発生するため、時々攪拌しながら、

 水分量15%で終了する。

 竪型循環式乾燥機は玄そばがタンク内を循環し、

 35〜40度の温風が吹く送風部を通過する間に

 乾燥するというシステムである。

        
 平型静置式乾燥機    竪型循環式乾燥機


E貯蔵方法


 種子は収穫後常温で放置するとしだいに

 発芽能力を失い、二年経つと発芽率は

 20%以下に落ち込む。

 また、そばの香りである甘皮のクロロフィル色素も

 次第に淡緑色から茶褐色へ変化する。

 品質劣化を防ぐため、15度以下、70〜75%の

 湿度で低温恒湿貯蔵する。